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2017年4月から福岡大学人文学部歴史学科で西洋史を担当してます。


by schembart

ニュルンベルク市立文書館

昨日、ようやくニュルンベルク市立文書館(Stadtarchiv Nürnberg)に行ってきました。

バイエルン・チケット(ドイツ鉄道の州内一日乗り放題券)を使って行くのですが、通勤ラッシュを避けるために平日は9時以降にしか使えないという制限もあるので、9時以降の最初の電車に飛び乗ります。ドナウヴェルト経由でおよそ1時間と少し、ニュルンベルクに着きました。

今回ははじめての訪問なので、受付で利用申請を出します。ぼくが何者で、どこの大学で何を研究していて、これこれこういう理由でニュルンベルクの文書館にやってきた次第です、ということを記入します。「このテーマで未刊行史料を使いたいならば、まず2階にいる文書館員B氏を訪ねて相談してみてね」という受付の兄さんの言葉に従って、2階に上がってB氏に「どうゆう史料がありますかねー」と相談することに。

「このテーマだと、残念ながら、うちにはまとまった史料は所蔵してないのですよ…」とB氏が説明してくれました。

かつて帝国直属都市であったニュルンベルクは、アウクスブルクも同様なのですが、1806年の神聖ローマ帝国の崩壊に伴って、とうぜん帝国直属身分を剥奪されてしまいます。両都市ともに、プロイセンやフランスなどの影響を受けてごたごたがあったものの、結局は当時のバイエルン王国に組み込まれることになります。そのさいに、都市が保管していた多くの文書類はバイエルン王国の所蔵となってしまいました。1818年、ニュルンベルクは部分的ではありますがその自治機能を復活させるのですが、そのときにバイエルン王国から都市文書の一部を返還されています。でも、それを除いた都市文書の多くは、その後もバイエルン王国の所有であり続け、いまでもバイエルン・ニュルンベルク州立文書館(Staatsarchiv Nürnberg)のほうに保管されている、とのことでした。

「ほら、(君が研究する)かつて都市が所有した帝国森林だって、いまでは州立森林となっているのですよ。」

もちろん、ぼくもそれなりの経緯は理解していたので、ニュルンベルク州立文書館にも行く予定ではあったのですが、帝国都市時代の史料は70~80%ほどが州立文書館の所蔵になっているとは思ってもいませんでした。アウクスブルクだと、市立文書館が帝国都市時代の史料の大部分を所蔵しているので、てっきりニュルンベルクもと思っていたのです。

とは言っても、関連しそうな史料はたくさんあるということで、B氏に付き従って「(史料探索のための)目録」(Findemittel)の使い方と注文の仕方を教えてもらいました。まずはどんな史料があるのかを、その目録を使って調べます。都市の森林管理局(Waldamt)のまとまった史料群は、大部分は州立文書館のほうにあるみたいですが、それでも参事会官房(Ratskanzlei)の文書であるとか参事会の布告(Mandat)のなかに、関連する重要な史料をいくつか見つけることができました。

そのうちの重要そうな史料をひとつ注文しまして、1ヶ月ぶりに手書き文書にも触れてきました。

こうしてニュルンベルクでの研究も始まりまして、なんとか手ごたえらしきものも得ることができました。あとは腰を落ち着けてじっくりと調査に励むばかりです。とりあえずは、市立文書館のほうからがんばろうと思います。州立文書館のほうはそのあとです。いつになることやら・・・、ですが、時間をかけないわけにはいきません。頑張ろう。

日帰りだと街中を見て回る暇もないので、ニュルンベルクの写真はまたのお楽しみということで。ニュルンベルク市立文書館は、普段は15時半で閉館なのですが、火曜日と金曜日はそれぞれ18時、16時までと閉館時間が延長される仕組みになっています。ですので、とりあえずは週2(火曜・金曜)でニュルンベルクに日帰りしながら研究を進めていこうと思っております。アウクスブルクのときのように毎日がっつり、というわけにはいきませんが、交通費もかかってしまいますし、仕方がありません。でも、その合間には文献読んだり、写し取った史料を整理したりと、やることはいくらもあるのです。

そんなこんなで、無事に新しい一歩を踏み出せました。あとは時間をかけて、じっくりと前に進んでいくだけであります。大きく息を吸い込んで、踏ん張っていこうと思います。
by schembart | 2010-01-20 18:12 | 研究