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2017年4月から福岡大学人文学部歴史学科で西洋史を担当してます。


by schembart

シリング教授との面談

以前の日記にも書きましたが、昨日はロタール・シリング教授と面談をしてきました。2008年10月からヨハネス・ブルクハルト教授の後任としてアウクスブルク大学近世史の正教授を務めていらっしゃる若い先生です。ばりばり活躍中の近世史家。これまでも講義には出ていましたが、実際にお話をするのは今回が初めて。

講義ではとても早口で、ドイツ人の友人も「あの先生はしゃべるの早いよね」と言っていました。一対一の面と向かっての留学生に対しては、おそらくゆっくり丁寧にしゃべってくださるだろう、というぼくの甘い期待もむなしく、いつものあの早口でした。キースリング先生の優しさが今更ながら心にしみてしまいます。

挨拶も早々に、さっそく研究のお話。テーマに関しては、とくに先生の研究テーマのひとつであるポリツァイ研究の観点から、「都市の森林政策」というぼくの研究計画にも大きな関心を示して下さいました。ちなみにシリング先生は、フランクフルトのマックス・プランク・ヨーロッパ法史研究所(Max-Planck-Institut für europäische Rechtsgeschichte)で長らく研究員を務め、ポリツァイ目録の編集にも携わっておられます。ただ「その研究所の仕事にもまだまだ穴があり、その大きなひとつが、まさに森林管理の問題と関わってくる」とのことでした。

それから、史料の話題へ。ポリツァイ条令や布告令などの規範史料だけでは、どれだけ綿密に調査を進めてみても、対象のひとつの側面しか明らかにすることはできない。「そのジレンマを克服するための見通しはありますか?」この問いは、もちろん先生自身の研究への問いでもあるわけで、まだまだぼくが答えを出せるような生易しいものではありません。「肝に銘じておけ」ということだと理解しました。

話の途中で専門家の名前がぽんぽんと飛び出して(恥ずかしながら半分ほどしかその名前を知らなかった…)、なかなかお話についていくので必死でしたが、とても刺激的な面談となりました。「こちらで博士論文を仕上げるのは簡単なことじゃないよ」とお灸を添えられつつも、研究指導の面倒も引き受けていただけることになりました。とてもフランクな先生ですが、研究に関しはどんどん鋭く突っ込まれそうな予感がします。留学生とか関係なく、容赦なんてありそうもありません(もちろん、それはありがたいことでありますし、考えてみれば当たり前のことなのですが、それでも、ちょっとくらい…、なんて)。ずいぶんと揉まれそう。そこでしっかりと踏ん張っていまよりもずっと鍛えられるか、ぽしゃんとダメになるかは、ぼくの根性にかかっているように思います。

シリング先生は、まだフランクフルトにお住まいがあるようで、毎週アウクスブルクまで通っておられるようです。「いつも新幹線でだいたい読むから、なにかあったらこれからは紙ではなく、データで送ってください」とのこと。

いずれにせよ、キースリング先生とシリング先生の共同指導というのは、考えてみればとっても贅沢な環境であることに変わりありません。年齢も研究スタイルも、そして人柄もまったく違うお二人ですが、そこから学ぶべきことは、それこそアルプスの山々のように沢山あると思います。ああ揉まれそう。鍛えられそう。くじけずに、がんばろう。
by schembart | 2010-06-26 03:50 | 研究