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2017年4月から福岡大学人文学部歴史学科で西洋史を担当してます。


by schembart

移動する都市門閥についてのお話

毎週火曜日は、マクシミリアン博物館主催の特別展「市民の力と書物の華麗(Bürgermacht & Bücherpracht)」の公開講演会に行っております。先週のグレゴール・ローマン博士(Dr. Gregor Rohmann)による「クレメンス・イェーガーとアウクスブルクの歴史叙述」も聞きに行きましたが、日記に書くのを忘れてました。ローマン博士のドイツ語が早すぎてうまく聞き取れなかったせいもありますが・・・。まだまだです。

今週は、バンベルク大学近代史講座のマルク・ヘーベルライン教授(Prof. Dr. Mark Häberlein)の講演会でした。アウクスブルクをはじめ、南ドイツの門閥家門についてのお仕事がおおくあります。刊行一覧は、こちら。16世紀アウクスブルクにおける商人家門の社会関係を扱った教授資格取得論文で有名です。

Mark Häberlein, Brüder, Freunde und Betrüger. Soziale Beziehungen, Normen und Konflikte in der Augsburger Kaufmannschaft um die Mitte des 16. Jahrhunderts, Berlin 1998 (Colloquia Augustana, Bd. 9).
『兄弟、親友、詐欺師:16世紀半ばにおけるアウクスブルク商人の社会関係、規範、そして紛争』

今回の講演は、近世社会におけるアウクスブルク都市門閥の移動に関するお話でした。へーベルライン教授のドイツ語は、いままでぼくが聞いてきたドイツ語の講演なかでも、いちばん聞きとりやすかったです。ぼくもこんなにリスニングできたんだ、と勘違いしてしまうほどに。とっても興味深く拝聴してきました。

Prof. Dr. Mark Häberlein, Bamberg
Pilger, Studenten, Handlungsreisende und Glaubensflüchtlinge: Migration und Mobilität in Augsburger Familienbüchern des 16. und 17. Jahrhunderts
巡礼者、学生、商旅行者、そして信仰亡命者:16~17世紀のアウクスブルク家系文書に見る移動と可動性

近代がダイナミックな動きのある世界で、近代以前は非ダイナミックな静止した世界。そんなイメージもありますが、近代以前にも、人々はたくさん移動していたのです。歴史学者たちは、いろんな史料を用いて、移動する人々の姿を追ってきました。へーベルライン教授によると、今回の展示会テーマである家系文書もまた、その近代以前の人々の移動について考察する際に、有用な情報をたくさん提供してくれる史料であるとのことです。移動する都市門閥を4つのカテゴリー(巡礼者、学生、商旅行者、そして信仰亡命者)にわけ、おおくの事例をあげながら、それぞれに分かりやすく解説してくれました。サンチアゴまで歩いて行った門閥子弟もいたようです。

そういえば、先週ミュンヘンで借りてきた本も、似たようなテーマを扱っていましたね。読んでみよう。こちらもいつか、(時間があれば)ご紹介します。

Klaus Herbers / Peter Rückert (Hg.), Augsburger Netzwerke zwischen Mittelalter und Neuzeit. Wirtschaft, Kulutur und Pilgerfahrten (Jakobus-Studien Bd. 18), Tübingen 2009.
『中世から近代にかけてのアウクスブルク・ネットワーク:経済、文化、巡礼』

昨日のブログでも触れましたが、日本だと栂香央里さんが、フッガー家を事例に近世のコミュニケーションやネットワークについての研究を進めておられます。博士論文も準備中とのこと。楽しみです。アウクスブルクにお住まいのみなさま、フッガー家についての研究を知りたければ、まずもって栂さんのご論文を読むのが一番です。
by schembart | 2011-05-20 04:05 | 講義・講演会・研究会