中近世ドイツ都市史を研究する渡邉さんの日々 2009年夏からドイツに留学中(2013年9月に帰国しました)


by schembart

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新しい世界

眼鏡を買い換えました。

前にレンズを換えたのがもう3年も前のことで、ずいぶんと度数も合わなくなっていたのです。視力の低下は如何ともしがたい事実です。ああ、昔は両目ともに1.5あったのに…。

眼鏡を換えてみて、想像していたことではありますが、周りの情景がものすごくはっきりくっきりと見えるようになりました。まさに新しい世界が立ち現れたのです。以前の自分がどれほどぼんやりとした曖昧な世界を生きていたのか。

世界が変わってしまいました―。

とりわけても遠景がとてもはっきりと見えます。くっきりと。それに、人々の顔。道行く人々の顔もきれいに視界に飛び込んできます。ぼくの見ていた世界など、まったくの偽物だったのかもしれません。だって、物事にはこんなにはっきりと輪郭があったのです。

かつてゲーテが次なようなことを言っていたはずです(おそらく)。眼鏡は悪魔が作った道具である云々(違ったらごめんなさい)。

でも、気にすることはありません。変わってしまったのは世界の方ではなく、ぼくのほうなのです。

歯医者に行って、眼鏡を新調し、あとは何か留学前にすべきことがあるだろうか?

あとは美味しいご飯を食べることくらいしか思い浮かびません。
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by schembart | 2009-06-27 11:36 | Comments(0)

回顧と展望

じめじめした日々が続いてます。回顧と展望の季節です。

「2008年の歴史学界―回顧と展望―」『史学雑誌』(第118編第5号、2009年)が刊行されました。

『史学雑誌』の5月号は、昨年に歴史学界で発表された著作・論文から、信頼できる研究者たちがそれぞれに重要と思われる成果を取り上げて、短い論評をつけて紹介するというもの。歴史を学ぶ大学院生にとっては、研究の重要な道しるべとなりますし、若手の研究者にとっては、自分の論考が取り上げてもらえるかどうかが気になるところ。

ありがたいことに、2008年に発表したぼくの研究ノート(「中近世ドイツ都市における森林政策」『比較都市史研究』27-1)も、ヨーロッパの「中世―中東欧・北欧」(薩摩秀登)と「近代―ドイツ・スイス・ネーデルラント」(谷口健治)のふたつの欄で取り上げていただきました。これまで共訳した論文が紹介されたことはありましたが、自分の論考が取り上げられたのは今回が初めて。嬉しい限りです。今後の研究の励みにもなります。

一年に一本の論文を。そして「回顧と展望」で取り上げてもらうこと。
これを目標に、今後もがんばりましょう。

総論や歴史理論をはじめ、別の分野の個所も拾い拾い読んで、自分なりにも「回顧と展望」をできたらなと思います。面白そうな論文・著作に出会えるのも、「回顧と展望」の嬉しいところです。
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by schembart | 2009-06-23 03:37 | 研究 | Comments(0)

修士論文の書き方

修士論文を書いたのは、2005年度(2006年1月提出)のこと。

大学院ゼミでこれから修士論文を書こうとする学生がいまして、執筆の参考にと、ぼくの修士論文を見せてあげることになりました(参考になるかはわかんないけども…)。現物は実家に置いてあるので、図書館に所蔵してあるものを借り出すことに。提出したときはただの紐綴じだったのが、ちゃんと製本されていたのが嬉しかったです。

どんなものかと、読み返してみたら、たしかにそこには拙い文章が並んでいます。
でも、必死に書いたからでしょう、ある種の勢いも感じられて、なかなか面白かったです。

恥をさらすようでもありますが、これも自分の足跡です。
以下が目次になります。

********************
2005年度修士論文
(早稲田大学大学院文学研究科に提出)

帝国都市ニュルンベルクにおける謝肉祭慣行とその変容
~15‐16世紀のシェンバルトラウフを例に~

序論:問題提起、研究目的

第1章:帝国都市ニュルンベルク(15~16世紀前半)
 第1節:門閥支配都市ニュルンベルク
 第2節:都市門閥Geschlechter/Patriziat

第2章:謝肉祭慣行シェンバルトラウフ
 第1節:史料「シェンバルトの書Schembartbuch, buecher」
  (ⅰ)史料の残存状況、作成年代、作成者
  (ⅱ)歴史史料としての問題点
 第2節:起源について、肉屋のダンスとシェンバルトラウフ
 第3節:シェンバルトラウフ略史
  (ⅰ)シェンバルトラウフの発展
  (ⅱ)担い手の変化
 第4節:市参事会による謝肉祭規定(ポリツァイ条令、参事会議事録)
 第5節:シェンバルトラウフの社会的機能とその変容

第3章:宗教改革とシェンバルトラウフ
 第1節:宗教改革前夜
  (ⅰ)教会と都市、キリスト教と謝肉祭
  (ⅱ)教会とシェンバルトラウフ
  (ⅲ)人文主義思想の浸透、謝肉祭に対する攻撃
 第2節:ニュルンベルク宗教改革運動
  (ⅰ)ニュルンベルクにおける宗教改革運動
  (ⅱ)改革の成果、運動の沈静化
  (ⅲ)アンドレアス・オジアンダー
 第3節:1539年のシェンバルトラウフ
  (ⅰ)15年の中断期
  (ⅱ)1539年シェンバルトラウフの経過
  (ⅲ)1539年シェンバルトラウフの意味
 第4節:宗教改革と「民衆文化」、「宗派の時代」と謝肉祭

結語、今後の課題

補足史料「シェンバルトの書」
補足資料「シェンバルト隊長一覧表」

参考文献表
********************

ちなみに、第1章、第2章の部分は、論文として活字になっています。

渡邉裕一「中世後期ニュルンベルクにおける謝肉祭慣行とその変容―15~16世紀のシェンバルトラウフを例に―(特集:中・近世ヨーロッパにおける統治権力と民衆--共同体のダイナミズム)」『西洋史論叢』第28号、早稲田大学西洋史研究会、2006年12月、113-125頁

でも、今回読み返してみて面白く感じたのは、むしろ第3章「宗教改革とシェンバルトラウフ」のほうで、若さに任せて言いたいことを大胆に語っています。すこし苦笑いしてしまう個所もありますが、なかなか良い視点で書いているとあの頃の自分をほめてあげたいです。

ちなみに、問題となっている1539年のシェンバルトラウフは、こちら
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by schembart | 2009-06-18 13:46 | 研究 | Comments(8)

学会報告を終えて…

昨日は日本西洋史学会(於:専修大学)で報告をしてきました。

土曜日はシンポジウム、懇親会に参加してきたのですが、翌日の自分の報告がどうも気になってしまい、ビールの味もよくわかりません。それでも、出会う方々から「明日がんばって!」と肩を叩かれて、気も引き締まりました。いつもなら二次会へ進むところですが、翌日に備えて、素直に帰宅し寝ることに。

日曜日。朝からレジュメ持って参上し、あれやこれやしていたら、気が付くと報告も終わってました。質疑応答では、三名の先生方からご質問をしていただき、うまく答えられない点もありましたが、どうにか切り抜けられたと思います。報告後には、幾人かの先生から「よかったよ」と声をかけてもらえました。今後の課題/方向性もはっきりと見えたように思います。

どたばたして、気がつくと飲み会へ。
司会をしていただいた先生といつものメンバーで昼過ぎから懇親会。ようやく美味しいビールを味わえました。

一仕事終えた気分です。

ご質問いただいた点など、まだまだ考察しなくてはいけないことも多くありますが、なによりも今回の内容を活字にするのが次の課題です。がんばろう。
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by schembart | 2009-06-15 11:37 | 研究 | Comments(0)

ドナウの夕暮れ

『をちこち(遠近)』という雑誌があることを初めて知りました。

本屋で偶然に手にした『をちこち』の特集が「多様性を繋ぐドナウ・ヨーロッパ」というもので、衝動的に買ってしまいました。

「多様性を繋ぐドナウ・ヨーロッパ」『をちこち』 No. 28、2009年4月・5月号、 山川出版社
目次はこちら

とくに目を引くのは、池内紀×中沢新一×沼野充義による巻頭鼎談(「ドナウ河は多様さを結びつける知恵を育んだ」)で、大物3人による興味深い「ドナウ河流域文化論」が展開されています。

ドナウ河は、ドイツの「黒い森」に源を発し、オーストリア、ハンガリー、セルビア、ルーマニア、ブルガリアを通って黒海に続きます。一般には「東欧」や「中欧」と呼ばれている地域です。言語も民族も、国家も宗教も異なるさまざまな人々が暮らす地域ですが、その多様性こそがこの「ドナウ河流域圏」の特徴であり、おもしろさだろうと三人は語ります。

とりわけユダヤ人やロマ(「ジプシー」)の存在が、この多様性豊かなドナウ河文化圏にある独特の「共通性、普遍性」を与えている、という指摘はとくに興味ぶかく読みました。いわゆる「ジプシー音楽」の話から、次のような会話が続きます。

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池内: ロマにとって言葉を文字として記述しないことが自分たちのアイデンティティになっている。それがおもしろいですね。我々からすると資料がないわけですから、非常にやっかいです。ナチの時代にロマがどれくらい殺されたかという数字すらわからない。40~50万人という説があると思えば、400~500万人という数字もある。しかし、あとに残さないという生き方は、人間としてものすごく高級ですよね。
中沢: かっこいい(笑)。
池内: 文明に対する一つの見事な意思表示です。(後略)
(上記鼎談20頁)
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歴史を学ぶことの本質的な難しさを言い当てられたような気分がします。中沢さんのように「かっこいい」とさらっと言えれば、それこそ格好よいのですが、なかなかどうして。ドナウ河流域文化圏、奥が深そうです。

その他にも、歴史家・南塚信吾さんによる「列強間の国際関係を生き抜いたドナウ地域」なんかもあって、とても勉強になりました。また似たような特集がされることを楽しみにしております。

ドナウ河に沈む夕日(ウルムにて)
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by schembart | 2009-06-05 23:08 | 読書 | Comments(0)

森林史の新たな潮流

今週の大学院ゼミで論文紹介をすることになりました。

良い機会なので、自分の研究テーマでもあり、近年ドイツの歴史学界でも注目を集めている「森林の歴史」について紹介することにしました。(本当は、学会報告の準備に追われて、新たな論文を読む時間がなかっただけなのです…)

2007年、2008年と続いて、ふたつの歴史学関連雑誌で「森林」をテーマとした特集が組まれました。ひとつは『農業史・農業社会学雑誌』の「森林史」に関する特集で、もうひとつは雑誌『中世』の「中世の森林:機能―利用―意味」という特集です。

論文のうちのいくつかにはすでに目を通していましたが、もちろんすべての論文を読み通したわけではありません…。

ゼミでは、各雑誌の目次と序文のところを簡単に紹介して、新しい森林史の潮流の一端だけを指摘するに留まる予定です。ちなみに『農業史・農業社会学雑誌』のほうで編集、巻頭言を担当しているのはWerner Rösenerという農業史の大家で、その主著は邦訳もされています(ヴェルナー・レーゼナー著、藤田幸一郎訳『農民のヨーロッパ(叢書ヨーロッパ)』平凡社、1995年)。

雑誌の性格上でしょうか、ぼくの研究している「都市と森林」に関する論文はどちらの特集にも収録されておらず、ちょっぴり残念です。

あと数日でまとめなくては。

以下が目次です。

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by schembart | 2009-06-03 00:30 | 研究 | Comments(0)