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中近世ドイツ都市史を研究する渡邉さんの日々 2009年夏からドイツに留学中(2013年9月に帰国しました)


by schembart

ミュンヘンの古本屋さん

週末は語学学校もないので、ゆっくりとミュンヘンの町中を歩きまわってきました。

南ドイツで一番の大都市だけのことはあって、ミュンヘンは多くの人でごった煮状態です。そんななか、どうも足が向いてしまうのは、やっぱり本屋さん。大きな新刊書店や雰囲気のある古本屋さんまで、いちいち店内に入って本を物色してきました。

古本屋さんで3冊ゲット。

- Rüdiger vom Bruch / Rainer A. Müller (hrsg.), Historikerlexikon. Von der Antike bis zur Gegenwart, 2. Aufl., München 2002.

- Richard van Dülmen (hrsg.), Fischer Lexikon. Geschichte, Frankfurt am Main 2003.

- Thomas Cramer, Geschichte der deutschen Literatur im Späten Mittelalter, 3. Aufl., München 2000.

どれもソフト・カバーの書籍で(Taschenbuch)、三冊で22ユーロほど。日本円にすると、うーん、と、1ユーロ=130円として、うーんと。まぁ、そんな具合です。古本なので、どれも半額で売られてました。

一冊目は、いわゆる『歴史家事典』(第2版)です。

古代から現代までの著名な歴史家を網羅的に集めて、生没年、略歴、著作、歴史家としてのお仕事、後世への影響などを簡単にまとめてくれています。取り上げられのは、古代ギリシアのホメ―ロスからはじまって、20世紀の歴史家たちまで、総勢600名ほどです。いずれも、大きな影響力をもった偉大な歴史家ばかり。錚錚たる名前が並んでいます。

日本人の歴史家は、5名だけ取り上げられていました。

Arai Hakuseki 新井白石 1657-1725
Tsuda Sokichi 津田左右吉 1873-1961
Yanagita Kunio 柳田國男 1875-1962
Ishimoda Sho 石母田正 1912-1986
Takahashi Kohachiro 高橋幸八郎 1912-1982

きっと日本人で取り上げる人数が限られていたのでしょう。大塚久雄ではなく高橋幸八郎であったりと、なかなか興味深い人選であるように思います。きっと、人選には大変な労力を使われたことでしょう。ちなみに執筆者は、日本中世史家の石井進東大名誉教授(1931-2001)。

第3版ができる際には、どうなっているだろう? 日本の一般社会への影響力などを考えると、網野善彦(1928-2004)と阿部謹也(1935-2006)が当然挙げられるべきだとぼくは思うのですが、どうでしょう? その場合、執筆は誰がするのだろう? そもそも第3版はでるのだろうか? ミーハーなぼくは、そういったことがいたく気になってしまう性質なのです。

それはそうと、この本はいつでも手に取れるように本棚に並べておきたいと思います。それぞれの歴史家を取り巻く時代背景や研究状況それ自体を知ることもまた、歴史研究のひとつの重要なお仕事なのです。


二冊目は、フィッシャー社刊『歴史学事典』です。

事典といっても、数万の項目が並んでいるものではありません。歴史を学ぶうえで重要と思われる基礎概念、時代区分、分析方法など、必要不可欠だと編者が判断した24項目に関して、それぞれの執筆者が各人の解釈を踏まえながら(!)、解説するというものです。「はじめに」で、編者のデュルメンがそう語っていました。

以下が目次と執筆者です。

1.Grundlagen, Methoden und Disziplinen der Geschichtswissenschaft
- Theorie der Geschichte (J. Rüsen)
- Politische Geschichte, Geschichte der internationalen Beziehungen (H.-U. Thamer)
- Neue Kulturgeschichte, Historische Anthropologie (O. Ulbricht)
- Sozialgeschichte, Geschlechtergeschichte, Gesellschaftsgeschichte (B. Ziemann)

2. Historische Grundbegriffe
- Arbeit, Arbeiter, Arbeiterbewegung (K. Tenfelde)
- Aristokratie/Adel (L. Kuchenbuch)
- Aufklärung (F. Kopitzsch)
- Bauer (P. Blickle)
- Bürger, Bürgertum (D. Hein)
- Familie (A. Gestrich)
- Faschismus (W. Schieder)
- Industrialisierung (K. Tenfelde)
- Kommunikation und Medien (C. Zimmermann)
- Nation, Nationalismus (U. Frevert)
- Reformation (P. Blickle)
- Religion, Kirche, Christentum (K. Nowak)
- Revolution (engl., amerik., franz., russ.,) (D. Langewiesche)
- Schule, Bildung (J. Hannig)
- Staat, Herrschaft (G. Lottes)

3. Historische Epochen
- Antike (J. Deninger)
- Mittelalter (J. Hannig)
- Frühe Neuzeit (J. Burkhardt)
- Neuzeit, Neuere Geschichte (D. Langewiesche)
- Neueste Geschichte (R. Hudemann)

ふー。写し疲れましたが、ぼくが読んだのはまだ「はじめに」だけです…。時間がある時に、第1部と第2部の「農民」「市民」「宗教改革」「信仰、教会」「産業化」「国家、支配」などの関心のある部分、それに第3部の「中世」と「近世」などなどを読み進めていきたいと思います。

ちなみに編者R.v. デュルメンは、多くのシンポジウムや出版企画を組織する近世・近代史の大家。「日常生活・文化史Alltags- und Kulturgeschichte」研究で有名です。翻訳もあります。近世史(16~18世紀)を研究したい学生さんには、最適な文献です。

- リヒァルト・ファン・デュルメン『近世の文化と日常生活』1,2,3巻、佐藤正樹訳、鳥影社、1993年、1995年、1998年。


三冊目は、トーマス・クラーマー『中世後期におけるドイツ文学の歴史』です。

『中世ドイツ文学の歴史』という三冊シリーズの最終巻。ちなみに『中世盛期』の著者は、宮廷文学研究で有名なヨアヒム・ブムケ(Joachim Bumke)のようです。

中世後期の都市年代記にも関心があり、数年前にゼミでもニュルンベルクの事例を報告したことがあります。文学作品として「年代記」を読むということはしてないので、文学者がどう扱っているかが興味のあるところ。でも、都市年代記の内容って、はっきり言ってしまうと、とても単調で、文学的な面白みはなかなか見いだせないように思うのですが…。どうなんだろう。

ドイツ中世後期の都市年代記を扱った歴史学の文献としては、例えば以下の翻訳があります。

- ペーター・ヨハネク(古川誠之/河野淳訳)「中世後期ドイツ都市における歴史叙述、歴史伝承、図像伝承」『比較都市史研究』25(2), 2006, 13-34頁。

久しぶりに本を買ってテンションが上がってしまい、どうも長くなってしまいました。ごめんなさい。本当は、全部読み終えてから紹介すべきなのかもしれませんが、まあそのあたりは、ご勘弁を。
by schembart | 2009-08-09 05:05 | 読書