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中近世ドイツ都市史を研究する渡邉さんの日々 2009年夏からドイツに留学中(2013年9月に帰国しました)


by schembart

公開連続講義『世界史の分岐点』

アウクスブルク大学の歴史学部が主催する公開連続講義(Ringvorlesung)が始まりました。

2009/10年冬学期のテーマは、『世界史の分岐点(Wendepunkte der Weltgeschichte)』というもので、昨日、第一回目の講義が行われました。アウクスブルク大学の歴史学部の教授が統一テーマのもとで代わる代わるに講義をしていくというもので、一般にも公開されています。以下が日程と題目です。

21. Oktober 2009
Prof. Dr. Martin Kaufhold
Canossa 1077: Dramatischer Auftakt zu einer neuen Weltordnung.
「1077年、カノッサ:新たな世界秩序の劇的な幕開け」

4. November 2009
Prof. Dr. Marita Krauss
Die Kreuzfahne, die Reichsacht und eine bayerische Exekution: Donauwörth 1607/1608 und die Wende in den Dreißigjährigen Krieg.
「十字旗、帝国追放、そしてバイエルンによる執行:1607/08年ドナウヴェルトと30年戦争への転換」

18. November 2009
Prof. Dr. Wolfgang E. J. Weber
1517/20: Der Aufstand der Frommen und die Weltgeschichte.
「1517/20年:敬虔者たちの反乱と世界史」

2. Dezember 2009
Prof. Dr. Lothar Schilling
Die Französische Revolution von 1789: Erfahrung, Deutung und Inszenierung des Umbruchs.
「1789年フランス革命:変革の経験、意味、そして演出」

16. Dezember 2009
Prof. Dr. Susanne Popp
10. Dezember 1948: Die allgemeine Erklärung der Menschenrechte durch die Vereinten Nationen.
「1948年12月10日:国際連合による人権の一般表明」

20. Januar 2010
Prof. Dr. Andreas Wirsching
6. Oktober 1976: Die Zerschlagung der „Viererbande“ und Chinas Rückkehr in die Weltgeschichte.
「1976年10月6日:「四人組」の粉砕と中国の世界史への帰還」

3. Februar 2010
Prof. Dr. Philipp Gassert
Der 11. September 2001: Das Ende des amerikanischen Jahrhunderts?
「2001年9月11日:アメリカの世紀の終焉?」


まずは、近世史のロタール・シリング教授から連続講義のテーマに関する一般的な解説がありました。世界史の転換「点」に注目することの現代的な意義を指摘されていましたが、興味深かったのはヤーコプ・ブルクハルトの名前を何度も引用されていたことです。ブルクハルトの名前には、開会のあいさつをされたポップ教授も言及されていました。

続いて中世史のマルティン・カウフホールト教授による講演「1077年、カノッサ:新たな世界秩序の劇的な幕開け」を聞いてきました。およそ1時間ほどの講演で、テーマはドイツ中世史のハイライト「カノッサの屈辱」事件です。教皇グレゴリウス7世に破門された神聖ローマ皇帝ハインリッヒ4世が、雪降る寒い1077年1月、破門の解除を願い教皇のいる北イタリアのカノッサまで赴いて許しを請うた、高校の教科書でもおなじみなあの事件です。中世ヨーロッパ世界を特徴づけた「教皇」と「皇帝」の関係を考える上でも、ひじょうに象徴的な出来事です。

文書館での手書き史料との格闘のあとで疲れ果てていたために講演中にうとうとしてしまったのも事実なのですが、そしてドイツ語がぜんぶは理解できなかった割には、とても興味深く聞くことができました(説得力がないけども)。カウフホールト教授は、まず事件のあらましを紹介し、そのあとにより分析的に、事件の前史と歴史的な背景(たとえば、神聖ローマ帝国内の諸侯がもった意味など)を解説されまして、そして最後に、連続講義のテーマとも関連して、「カノッサ事件は歴史的な転換点であったか?」という問いに対するご自身の考えを述べ、かつ現代社会の問題まで(「聖職者」という考え方を基礎としたカトリック教会)言及されて講演を終えられました。こんなことを言うのもおこがましいのですが、とてもメリハリの利いた、副題にもあるような一種「劇的」な、盛り上がりのある講演でした。聴衆もみんな満足げでした。

最後の部分で教授は、フランクフルト大学中世史のベルンハルト・ユッセン教授(Prof. Dr. Bernhard Jussen)の「叙任権闘争における国王権の脱神聖化・脱オーラ化(Entsakralisierung/Entauratisierung des Königtums im Investiturstreit)」という言葉を引用されてました。ヨーロッパにおける聖と俗というおおきな問題を考える上でも、カノッサ事件はとても象徴的な意味を持っているとのことでした。

来月の二つの講義は、どちらもぼくの専門とする時代を扱っておりますので、どんなお話が聞けるのかいまからとても楽しみです。専門が近い分、今度はもっとドイツ語も理解できたらよいのですが…、また感想を書きたいと思います。
by schembart | 2009-10-23 03:17 | 講義・講演会・研究会