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中近世ドイツ都市史を研究する渡邉さんの日々 2009年夏からドイツに留学中(2013年9月に帰国しました)


by schembart

2010/11年冬学期

アウクスブルク大学でも冬学期の授業が始まっております。夏学期に引き続き、またいくつか面白そうな講義が開講されるので、また聴きに行こう。

まずマルティン・カウフホールド教授(Prof. Dr. Martin Kaufhold)による中世史の講義。今回のテーマは「中世の王権(Das Königtum im Mittelalter)」。以下が講義の概要。

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(聖書までさかのぼる)古くからの伝統を持つ王権は、中世にヨーロッパで支配的な統治形態となる。初期中世には王権が存在せず、また中心的な統治機構も持たなかった国々もまた、キリスト教化にともなって王国へと発展した。例外は少ない(アイルランドやスイス)。ともあれ、長い中世(500年~1500年)の経過の中で、王権は著しい変化を被ることとなる。(たしかに実際にはほとんど見られないが)臣民に対するあらゆる権限を有したキリスト教化された部族の首領から、中世盛期および後期になると、範囲のはっきりと限定された権限を有する世俗の支配者が生まれた。徐々に政治理論も形成される。ヨーロッパの重要な王国においてさまざまな伝統が成立する(世襲王制と選挙王制、強大な中央集権あるいは封建構造・議会の参与)。本講義では、影響力を強く持つこの伝統形成の特性を解説し、シチリアからノルウェー、スペインからポーランドに至るまでの国々を重要な事例に、王権のさまざまな特質を取り上げる。以下の問いが重点的に扱われる。どんな理念が国王の支配を特徴づけ、それはいかに変遷していったか? 支配の枠組みはいかに発展していったか? 実際にどの国々が王を頂き、どのような支配の手段を用いていたのか? 中世の有名な国王たちについて、私たちは何を知っているのか? 女王たちは何をしていたのか? ヨーロッパの歴史を長きに渡って特徴づけたこの支配形態の国制的・政治史的なポートレートを多彩に描くことが講義の目的となる。
参考文献:
- Das Königtum. Seine geistigen und rechtlichen Grundlagen. Mainau-Vorträge 1954, 4. Aufl. Sigmaringen 1973.
- E. Boshof, Königtum und Königsherrschaft im 10. und 11. Jahrhundert, München 1993.
- R. Schneider, Das spätmittelalterliche Königtum im europäischen Vergleich, Sigmaringen 1987.
- E. Kantorowicz, Die zwei Körper des Königs, München 1990.
- Bernhard Jussen (Hrsg.), Die Macht des Königs: Herrschaft in Europa vom Frühmittelalter bis in die Neuzeit, München 2005.
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ロタール・シリング教授(Prof. Dr. Lothar Schilling)による近世史の講義。テーマは「17世紀のヨーロッパ(Europa im 17. Jahrhundert)」で、夏学期の続き。

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2010年夏学期の講義に引き続き、本講義では―研究上、異常な危機の世紀と称される―「長い」17世紀について概観する。それは「鉄の」時代であり、終わりなき戦争、甚大なカタストロフの時代であり、―多くの国々(例えばドイツの大部分、イタリア、イベリア半島)では―たとえ没落とは言えなくとも、統計人口上・経済上の停滞の世紀であった。17世紀はまたフランス史上「偉大な世紀」、「古典的な時代」であり、世紀半ばからはヨーロッパ全域にわたるバロックの時代でもあった。社会史的に見ると、17世紀は社会階層の安定化期であり、またあるところでは農村世界の著しい再封建化の時代であった。本講義では、この時代の主要な展開を概観し、とくに30年戦争、イングランドの革命における危機、スペインの没落、ルイ14世の王制、またハプスブルク家の興隆を取り上げ、それを経済・社会史的、政治・国制的展開の文脈の中に位置づける。
参考文献:
- Robert Mandrou, Staatsräson und Vernunft. 1649-1775, Frankfurt u.a. 1976.
- Paul Münch, Das Jahrhundert des Zwiespalts: Deutsche Geschichte 1600-1700, Stuttgart 1999.
- Thomas Munck, Seventeenth Century Europe. State, Conflict and the Social Order in Europe 1598-1700, London 1990.
- Volker Press, Kriege und Krisen. Deutschland 1600-1715, München 1991.
- Heinz Duchhardt, Europa am Vorabend der Moderne 1650-1800, Stuttgart 2003.
- Heinz Schilling, Konfessionalisierung und Staatsinteressen. Internationale Beziehungen 1559-1660 (Handbuch der Geschichte der Internationalen Beziehungen 2), Paderborn u.a. 2007.
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ギーゼラ・ドロスバッハ教授(apl. Prof. Dr. Gisela Drossbach)による地域史の講義。テーマは「中世後期のバイエルンとシュヴァーベン:皇帝と異端、危機と改革(Bayern und Schwaben im Spätmittelalter. Kaiser und Ketzer, Krisen und Reformen)」。ちなみにドロスバッハ教授は、以前にゼミで読んだメーゲンベルクのコンラート(Konrad von Megenberg, 1309-1374)に関する研究で有名です。

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14世紀はアヴィニョン教皇庁(1316~78年)と西洋の大シスマ(1378~1415年)、100年にわたる政治権力間の闘争によって特徴づけられる。バイエルンとシュヴァーベンもこの展開に決定的に巻き込まれる。本講義では、とくにシュヴァーベンの諸帝国都市の、一方ではドイツ王・ローマ皇帝に対するその地位に、他方で都市間の政治的ネットワーク化に焦点が当てられる。(…)また編纂された都市法の発展、その違反と刑罰も講義の関心事となる。さらに、「危機」、すなわち中世後期に多大な影響を及ぼすこととなる大ペストとその他の疫病、農業危機、温暖期の終焉などの諸要素、および地域における帝国、騎士・宮廷の貴族、異端と異端審問の開始、教育と芸術などもまた重要なテーマとなる。
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そのほか、毎冬学期に開催される連続公開講義(ちなみに前回のテーマは『世界史の分岐点』)ですが、今回のテーマは『歴史におけるエリート(Eliten in der Geschichte)』。早稲田大学のヨーロッパ文明史研究所が進める研究プロジェクトに通じるところがあります(参照:井内敏夫(編)『ヨーロッパ史のなかのエリート―生成・機能・限界―』太陽出版、2007年;森原 隆(編)『ヨーロッパ・エリート支配と政治文化』成文堂、2010年)。いくつか面白そうなタイトルも並んでるので、聴きに行ったらまたここでも紹介したいと思います。
by schembart | 2010-10-20 00:31 | 講義・講演会・研究会