中近世ドイツ都市史を研究する渡邉さんの日々 2009年夏からドイツに留学中(2013年9月に帰国しました)


by schembart

『オラクル・ナイト』

ポール・オースター、柴田元幸訳『オラクル・ナイト』新潮社、2010年

久しぶりに純粋な喜びとしての読書。一時帰国のさいに購入して持参したオースターの『オラクル・ナイト』を読みました。去年のお正月は、たしかオースター『幻影の書』を読んだので、お正月にはオースターの物語を読み耽るのがお決まりとなりつつあります。素敵な年初め。

病み上がりの作家シドニーが主人公。どことなくぎこちない彼の身体の動きをよそに、物語は途方もない渦の中に呑みこまれていきます。物語中にシドニーが描き上げる物語もまた、ひとりでにどんどんと動き出し、そうかと思うと、ぱたりと消滅します。ひとつの物語がまた別の物語を呼び起こし、あるいはまったく無関係に、平行して、語られ、また途絶えます。

あらすじや文学的なあれこれはまあ置いておくとして、久々に読書をするあの純粋な喜びを存分に堪能できました。相変わらずのオースター・ワールド。楽しまないと損します。それに、いつものごとく本の装丁が美しいし、格好良い。そういえば、本書の重要な登場人物グレース(シドニーの妻)も出版社の装幀室で活躍するデザイナーで、シドニーの本の表紙を担当し、それが二人の出会いとなったのでした。きっと、新潮社の装幀室は、そんなことを考えながら『オラクル・ナイト』の表紙についてあれやこれや話し合ったのだろうと勝手ながらに想像します。そういうのって、なんだかとってもいいですね。本を作るのって、なにより楽しそう。

柴田さんの翻訳、さすがです。こんなふうに異なる言語を右から左に移し替えていくことができたら、きっとどんなに楽しいことだろうと夢想します。次のオースター作品はいつごろでしょう(楽しみにしております)!?

次に小説を読めるのは、いつになるかな。何を読もうかな。昔みたいにずっと小説ばかり読んで過ごすこともできないけど、次に何を読もうか思案しながら過ごすのも悪くありません。ぼくも大人になりました。
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by schembart | 2011-01-05 22:34 | 読書