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2017年4月から福岡大学人文学部歴史学科で西洋史を担当してます。


by schembart

書評『中世後期の大災害』

以前に紹介しました、ゲルハルト・フーケー/ガヌリエル・ツァイリンガー『中世後期の大災害』(Gerhard Fouquet / Gabriel Zeilinger, Katastrophen im Spätmittelalter, Darmstadt 2011)の書評が公開されておりました。

Christian Rohr: Rezension zu: Fouquet, Gerhard; Zeilinger, Gabriel: Katastrophen im Spätmittelalter. Darmstadt / Mainz 2011, in: H-Soz-u-Kult, 02.05.2012.

評者は、こちらも以前にご紹介しました『東アルプス地域における極端な自然現象』の著者でもあるクリスティアン・ロール教授。気候史研究で高名なあのクリスティアン・プフィスター教授(Prof. em. Dr. Christian Pfister)の後任として、2010年からベルン大学の経済・社会・環境史講座の正教授を務めております(前のぼくの記事では、ザルツブルク大学の助教授と紹介してますが、あの時ももうベルン大学の正教授になられていたのかもしれません。うーん。きっと当時のぼくの調べ方が甘かったのでしょう)。これまでも気候史、環境史研究において中心的な役割を担ってきたベルン大学ですが、災害史研究の面でも、注目すべき研究成果が今後もここから発信されていくことが予想されます。要チェックです。

書評は、『中世後期の大災害』が新しい災害史の方法論を提示しているわけではなく、叙述も例示的なものにとどまっているが、入門書としてはしっかりとその任を果たしていると評価しております。「文章は読みやすく、例として引用される史料もよく選択されている。添付された挿絵は一見の価値があるし、文献一覧もしっかりしている」。昨日ご紹介した本が典型的ですが、たしかに災害史研究は、例示的な叙述に終始しがちです。それはそれで意味のある作業だとは思うけれど、方法論としては、もっともっと洗練させる必要があるように思います。うーん。ぼくももう少し考えてみないといけません。
by schembart | 2012-05-03 16:24 | サイト紹介