中近世ドイツ都市史を研究する渡邉さんの日々 2009年夏からドイツに留学中(2013年9月に帰国しました)


by schembart

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みなさま、こんにちは。

当ブログ「南ドイツ留学日記―アウクスブルク便り」ですが、気がついたらもう始めてから1年が経っていました。1年前は、まだ東京でママチャリに乗って、歯医者に通って、夏からのドイツ留学に向けて、あれやこれやと思案したりと忙しかったのです。ああ、懐かしい。一年前の風景

「今歩いているこの道は、いつか懐かしくなるだろう」

もともとは日本にいる家族や友人たちへの生存報告を意図して始めた日記でしたので、ドイツでの生活の些細なあれやこれやを記していこうと思っていましたが、どうしてもやっぱり自分の研究のことやら、文献紹介が中心となってしまいます。まぁ、それもまた、仕方がありません。「ああ、あいつ、また訳の分かんない本を読んでいるな、じゃきっと元気なのだろう」と思ってください。

なかなかまめな性格ですので、1年間で128件の記事を書きました。3日に1回以上、なかなかいいペースです。これからも、気長に、気軽に、意味のないこと、意味のあること、研究のこと、日々の些細な出来事など、なんでもありのごちゃまぜブログを目指していこうと思います。

文献紹介などは、出来るかぎり有益な情報を提供しようと努力はしておりますが、なにぶん不完全な人間ですので、びっくりするほどの勘違い(ほんとうに自分でもびっくりしてしまいます)や単なる無知からの間違った記述なども散見されることと思います。誤解やら翻訳の間違いなど、気がついた点などありましたら、これからもいろいろとご指摘いただければ嬉しいです。

それでは、一周年を記念しまして、ぼくの大好きなナンバーをご紹介します。ギター少年だったぼくのハートを熱くした一曲です。こんな格好良いステージを見せられたら、ぼくだってギターが弾きたくなるというものです。



斎藤和義「幸福な朝食 退屈な夕食」
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by schembart | 2010-04-28 16:18 | 留学生活

文献紹介『中世の技術』

Marcus Popplow: Technik im Mittelalter, München 2010.
『中世の技術』

べック社(C.H.Beck)新書の最新刊。128頁。

著者マルクス・ポップロー博士(Dr. Marcus Popplow)は、産業化以前ヨーロッパの技術史、科学史、環境史を専門とされています。

中世の技術史に関する概説書。短い割には、たくさんのトピックを取り上げていてなかなか勉強になります。以下が目次。

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I. Einleitung(はじめに)
Überreste: Objekte(遺物:モノ)
Überreste: Schriften(遺物:文字)
Ansätze der Forschung(研究の兆し)
Räumliche und zeitliche Grenzen(空間的・時間的枠組み)

II. Rahmenbedingungen(枠組みとなる条件)
Orte der Technik(技術の場)
Kloster(修道院)
Schlachtfeld(戦場)
Werkstatt (工房)
Haushalt(家)
Hof(宮廷)
Ressourcen(資源)
Akteure(立役者)
Institutionen(手引き)
Medien(媒体)
Begriffe(概念)
Europa in der Welt(世界のなかのヨーロッパ)

III. Innovationsprozesse(刷新の経過)
Von einem Ort zum anderen: Transport(ある地点から別の場所へ:輸送技術)
Zu Lande(陸路)
Zu Wasser(水路)
Handelswege(商業路)
Spiralen der Aufrüstung: Militärtechinik(武具の発展:軍事技術)
Hand- und Fernwaffen(手持ちの武器・長距離武器)
Belagerungsgerät(包囲用武器)
Techinische Vielfalt als Prinzip: das Handwerk(原則としての技術的多様性:手工業)
Handwerk und Innovation(手工業と刷新)
Glas (ガラス)
Textilien(繊維製品)
Buchdruck(印刷)
Landwirtschaft - ein technikfernes Feld?(農業―技術からかけ離れた分野?)
Universalmotor des Mittelalters: die Mühle(中世における万物の発動機:水車)
Die verborgenen Schätze von "Mutter Erde": Bergbau(「母なる大地」の秘宝:鉱山業)
Glanzpunkt der mittelalterlichen Techinik: Kirchenbau(中世技術のハイライト:教会建築)
Erfindung der Zeitmaschine: die mechanische Räderuhr(時計の発明:からくり時計)

IV. Motivationen?(動機?)
Christliche Werte als Förderer der Technik?(技術の促進者としてのキリスト教的価値?)
Technikverständnis ohne Technikbegriff?(概念なき技術理解?)
Sagen Bilder mehr als Worte?(絵は言葉よりも物を言う?)

V. Wege in die Neuzeit(近代へのいくつかの道程)

Weiterführende Literatur
Bildnachweis
Sachregister
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資源としての木材やその運搬方法にも触れられていまして、ぼくには嬉しい限り。技術史と環境史というのは、じつはかなり深い関係を持っているのです。

中世史における技術史の位置づけ、それからドイツにおけるその研究史については、文献目録に載っていた著者の以下の論文が参考になりそうです。こんど時間を見つけて読んでみよう。

Popplow, M.: Die Technik als Thema der Mediävistik, in: W. König/H. Schneider (Hg.), Die technikhistorische Forschung in Deutschland von 1800 bis zur Gegenwart, Kassel 2007, S. 207-225.

中世ヨーロッパの技術史といえば、昨年に刊行された以下の文献がすぐに思い浮かびますね。ぼくも2月の一時帰国のさいに購入して読みました。フランス語圏の事例が中心ですが、森林のことにも頻繁に触れらていて、とても勉強になりました。

堀越宏一『ものと技術の弁証法:ヨーロッパの中世⑤』岩波書店、2009年
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by schembart | 2010-04-27 03:53 | 文献紹介

サイクリング

学生寮では自転車を借りることができます。半学期契約で40€。夏学期だけ借りることに。

けっこう立派なマウンテン・バイク。ぼくがいままでに乗ってきた自転車たち(多くはママチャリ)に比べても、いちばん頑丈で、格好も良いのです。
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もう一枚。
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今日は午後の講義が突然の休講だったので、サイクリングに行ってきました。レヒ川に沿って自転車を走らせます。レヒ川のほとりにある落ち着いた湖まで。4月から交換留学でアウクスブルクに来ているかみつキッド君と以前に二人で行って以来、なかなかお気に入りの場所となっています。

とても静かで、時間がのんびりと流れています。
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もう一枚。
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森のなかの道や川沿いの道。散歩やジョギング、それからサイクリングに最適です。身体がずいぶんと鈍っていますので、たまには気晴らしに自転車を走らせて汗を流すのもいいものです。気分転換にもなります。

おまけ。いつかの夕暮れ。
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by schembart | 2010-04-23 01:56 | 留学生活
Ulrich Rosseaux: Städte in der Frühen Neuzeit, Darmstadt 2006.
『近世の諸都市』

近世ドイツ都市に関する概説書。著者のウルリッヒ・ロソー(Dr. Ulrich Rosseaux(読み方合ってます??))氏は、ドレスデン大学ザクセン地域史の講師。1968年生まれ。こちら

本書は、1500年から1800年までのおよそ3世紀間、地域的には神聖ローマ帝国内に存在した大きさも機能もさまざまであった都市を対象としています。「中世都市」と「近代都市」にはさまれた近世都市は、古典的な都市史研究では「狭間の時代」(Städtetal)と称されて、中心的なテーマとなることはそれほどありませんでした。ですが、都市化(Urbanization)の過程をより長期的に観察しようという1980年代以降の潮流(例えば、Jan de Vries, European Urbanization 1500-1800, London 1984)にともない、都市史研究の伝統あるドイツにおいても、「近世都市」が重要な研究テーマとなって浮上してきます。例えば、ハインツ・シリング『近世の都市』(Heinz Schilling, Die Stadt in der Frühen Neuzeit, München 1993)など。

シリングの概説書に比べると、本書はより初学者向けの入門書となっております。近世都市に関心のある方が手始めに手にするのに最適です。150頁ほど。

以下が目次。

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I. Einleitung(はじめに)

II. Städtewesen und urbane Demographie(諸都市と都市人口動態)
1. Quantitative Aspekte der Städtelandschaft in der Frühen Neuzeit(数量的視角からみる近世の諸都市がおりなす地域帯)
a) Verstädterung(都市化)
b) Einwohnerzahlen(人口数)
2. Urbane Demographie(都市の人口動態)
a) Quellen und methodische Probleme(史料と方法の問題点)
b) Geburten, Hochzeiten, Tod(誕生、結婚、死)
c) Zuwanderung(移住)
d) Demographische Krisen(人口動態上の危機)
3. Städtetypen(都市の諸タイプ)
a) Reichsstädte und Autonomiestädte(帝国都市と自治都市)
b) Residenzstädte(宮廷都市)
c) Bergstädte(鉱山都市)
d) Universitätsstädte(大学都市)
e) Exulantenstädte(亡命都市)
f) Festungsstädte(防塞都市)
g) Idealstädte(理想都市)
h) Kurorte(保養地)

III. Wirtschaft - Gesellschaft - Politik(経済―社会―政治)
1. Wirtschaftliche Strukturen(経済構造)
a) Handel(商業)
b) Handwerk(手工業)
c) Neue Gewerbezweige(新たな職業分野)
2. Soziale Strukturen(社会構造)
a) Bürger und Einwohner(市民と住民)
b) Reichtum und Armut(富と貧困)
c) Randgruppen und Minderheiten(周縁グループとマイノリティ)
3. Politik(政治)
a) Institutionen und politische Verfahren(制度と政治の手続き)
b) Konflikte und Unruhen(紛争と騒擾)
c) Politische Festkultur(政治的な祝祭文化)

IV. Stadt und Religion(都市と宗教)
1. Stadt und Reformation(都市と宗教改革)
a) Die Reformation als "urban event?"(“都市の出来事”としての宗教改革?)
b) Reformation in den Reichs- und Autonomiestädten(帝国・自治都市における宗教改革)
c) Landstädtische Reformation(en)(ラント都市の宗教改革)
d) Städte ohne Reformation(宗教改革なき諸都市)
2. Zwischen Konflikt und Koexistenz(紛争と共存の合間)
a) Auf dem Weg zur konfessionell homogenen Stadt(宗派が均質な都市への道のり)
b) Mehrkonfessionelle Städte(多宗派都市)

V. Stadt und Umwelt(都市と環境)
1. Stadtbild und Architektur(都市像と建築)
a) Das städtische Umland(都市の周辺地)
b) Befestigungsanlagen(防備施設)
c) Häuser und Straßen(家々と街路)
2. Ökologie und Gesundheit(エコロジーと健康)
a) Wasser und Energie(水とエネルギー)
b) Öffentliche Hygiene(公衆衛生)
c) Gesundheitsfürsorge(健康福祉)
d) Rauch, Gestank und andere Emissionen(煙、悪臭、その他の汚染排出)

VI. Leben in der Stadt(都市での生活)
1. Zeitstrukturen(時間構造)
a) Kalender und Jahreslauf(暦と一年の経過)
b) Uhren und Zeitrechnung(時計と年代)
c) Tag und Nacht(日中と夜中)
2. Wohnen - Nahrung - Kleidung(住居―食糧―衣服)
a) Wohnkultur(居住文化)
b) Essen und Trinken(食事と飲み物)
c) Kleidung(衣服)
3. Unterhaltung, Erholung und Vergnügen(娯楽、保養、気晴らし)
a) Jahrmärkte, Schützenfeste, Karneval(年市、射撃際、謝肉祭)
b) Musik und Tanz(音楽とダンス)
c) Theater(芝居小屋)
d) Schaustellungen(見世物/展示会)
e) Spaziergänge, Ausflüge, Bäder: Erholung und Vergnügen im städtischen Umland(散歩、遠足、浴場:周辺地での保養と気晴らし)

VII. Bibliographie
Register
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本書の紹介とはずれてしまいますが、ずっと気になっていたことがありますので、ここでちょっぴりと触れておきたいと思います。

ドイツ都市史・地域史上の重要概念として、"Städtelandschaft"というものがあります。本書でももちろん登場しますが、この"Städtelandschaft"、邦訳するのがなかなか難しい、やっかいな言葉であるのです。こちらの研究者の間でも、大まかな認識の一致はあるものの、細かな点ではいろいろと差異もあるようです。都市ネットーワークという意味で使っている研究者もいれば、もっと違った意味合いを含意するものとして使用している研究者もいます(例えば、ぼくの指導教授であるキースリング先生とか)。がっちりと確固とした定義付けをするよりも、むしろ緩やかな概念として使用することで、新たな問題を発見するための標語として使われているようにも思います。

ちなみに、ぼく自身としては今のところ「諸都市が織りなす地域帯」という訳語がぴったりくるように思っています。ちょっと説明しすぎな感もありますが、みなさまのご意見・ご批判などありましたら、お教えいただければ幸いです。
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by schembart | 2010-04-22 00:08 | 文献紹介

2010年夏学期

長かった春休みもそろそろ終わりまして、ようやくアウクスブルク大学でも今週、来週あたりから授業がはじまります。

ぼくはと言えば、相変わらず週2回のペースでニュルンベルク都市文書館に通う日々を続けております。冬学期はほとんど大学に行くことはなかったのですが、夏学期は講義だけでも聞きに行こうかなと思っています。ニュルンベルクには毎日行くわけではないですし、ちょうどうまいことに木曜日に続けてとても面白そうな講義があるのです。

ひとつはマルティン・カウフホールド教授(Prof. Dr. Martin Kaufhold)による中世史の講義。今回は中世後期がテーマとなっています。こちら

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中世末期の波乱に富んだ時代―そこではさまざまな新しい運動が教皇庁教会を中心とした信仰の秩序に疑問を投げかけ、社会的な紛争が形成されつつある社会秩序に不安を与え、ヨーロッパの政治権力が新たな姿となって現れ出てくる。本講義はそんな時代を取り上げる。ペストの襲来や百年戦争などの多種多様な危機が時代を震撼させ、人口は顕著に減少する。しかしそれは新たな秩序の芽生えの時代でもあった―宗教改革につながるいくつかの潮流、ルネサンス、発見の旅の開始のなかにその萌芽を見出すことができる。講義はペスト危機から15世紀後半―コンスタンティノープルがトルコに占領され、百年戦争は終焉を迎え、印刷術が発明され、それにより中世の知識が広まり、ついにはコロンブスがマルコ・ポーロの旅を読み知り、そしてヨーロッパは新たな自己認識に沿って新たな境界を切り開く―までを射程とする。
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参考文献として挙げられているのは、次の2点。

- Peter Moraw, Von offener Verfassung zu gestalteter Verdichtung. Das Reich im späten Mittelalter 1250-1490, Berlin 1985.
- Erich Meuthen, Das 15. Jahrhundert. 4. Aufl. München 2006.

もうひとつは、近世史のロタール・シリング教授(Prof. Dr. Lothar Schilling )による講義「16世紀のヨーロッパ」。

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講義では近世初期のヨーロッパ史に関する概略を提示する。同時代人によるヨーロッパのイメージやその認識のありかた、それからヨーロッパ外の世界とのかかわり、また1500年頃のヨーロッパ社会の構造などが扱われる。宗教改革、宗派に沿った共同体の形成、そこから生じる危機や紛争などの問題は、ヨーロッパ全体の趨勢のなかで考察する必要があり、また経済・社会・政治・国制上の展開という文脈のなかに位置づけて論じることが重要となる。
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参考文献は、
- Geoffrey R. Elton, Europa im Zeitalter der Reformation 1517-1559, 2. Aufl., München 1982.
- Michael Erbe, Europa im konfessionellen Zeitalter. 1500-1600, Stuttgart 2009.
- Robert von Friedeburg / Luise Schorn-Schütte, Politik und Religion: Eigenlogik oder Verzahnung? Europa im 16. Jahrhundert, München 2007.
- Harm Klueting, Das konfessionelle Zeitalter. Europa zwischen Mittelalter und Moderne. Kirchengeschichte und Allgemeine Geschichte, Darmstadt 2007.
- Heinrich Lutz, Reformation und Gegenreformation, 5. Aufl., München 2002.

どちらも面白そう。きっと概説的なお話が多くなると思いますが、ドイツ語の聞きとりの訓練もかねて、週に一度は大学まで出かけてのんびりと講義を聴講してこようかと思います。
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by schembart | 2010-04-19 21:10 | 講義・講演会・研究会
Verena Winiwarter / Martin Knoll: Umweltgeschichte. Eine Einführung, Köln u. a. 2007.
『環境史:入門』

船便で送られてきた本のなかから、今回は環境史の入門書をご紹介します。

ヴェレーナ・ヴィニヴァルターマルティン・クノールの共著。環境史の対象とその方法、重点的な研究分野、これまでの成果や現在の研究動向、それから40頁以上にわたる詳細な文献目録と、入門書と言ってもその内容はとても充実しております。

以下が目次。

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Vorwort

1. Einleitung
「導入」

2. Einstieg in die Umweltgeschichte
「環境史へのアプローチ」
2.1. Geschichtswissehschaften heute
「今日の歴史学」
2.2. Was beobachtet die Umweltgeschichte?
「環境史は何を観察するのか?」
2.3. Die Entwicklung des Fachgebiets weltweit
「世界における当専門分野の発展」

3. Themen der Umweltgeschichte
「環境史の主題」
3.1. Ideengeschichten der Natur
「自然の思想史」
3.2. Europäische Themen 1: Antike und Mittelalter
「ヨーロッパの主題1:古代と中世」
3.3. Europäische Themen 2: Langzeitstudien, Landschaft, Klima
「ヨーロッパの主題2:長期的研究、景観、気候」
3.4. Amerikanische Themen: Siedlergesellschaft
「アメリカの主題:移民社会」
3.5. Verschmutzungs- und Belastungsgeschichten
「汚染・環境負担の歴史」
3.6. Neue Trends in der Umweltgeschichte
「環境史の新たな動向」

4. Methoden der Umweltgeschichte
「環境史の方法」
4.1. Wie geht man an umwelthistorische Fragestellungen heran?
「いかに環境史的な問題に取り掛かるか?」
4.2. Historische Methodik
「歴史の方法論」
4.3. Einführung in ausgewählte naturwissenschaftliche Methoden
「えり抜きの自然科学的方法への入門」
4.4. Methoden der Integration
「統合の方法」

5. Konzepte, Theorien und Erzählweisen der Umweltgeschichte
「環境史の構想、理論、語り口」
5.1. Rekapitulation
「要旨の再述」
5.2. Konzepte und Modelle in der Umweltgeschichte
「環境史の構想とモデル」
5.3. Theoretische Klärungen in der Umweltgeschichte: "agency" und Co-Evolution
「環境史の理論的解明:"媒介"と共進化」
5.4. Umwelthistorische Erzählweisen
「環境史の語り口」

6. Landnutzungssysteme aus umwelthistorischer Sicht
「環境史的視点から見る土地利用システム」
6.1. Überblick über wichtige Themen der Forschungsliteratur
「研究の重要テーマ概略」
6.2. Agrargeschichtliche Themen mit Umweltbezug
「環境に関する農業史のテーマ」
6.3. Forstgeschichtliche Themen mit Umweltbezug
「環境に関する森林(林業)史のテーマ」
6.4. Landbedeckung und Naturschutz
「土地保全と自然保護」
6.5. Grundlagen einer umwelthistorischen Betrachtung der Landnutzung
「土地利用の環境史的な観察の基礎」

7. Umweltgeschichte der Stadt
「都市の環境史」
7.1. Definition und Typologie
「定義と類型」
7.2. Perspektiven und Probleme
「展望と課題」
7.3. Aspekte und Entwicklungslinien der städtischen Umweltgeschichte
「都市環境史の視角と展開の方向」

8. Umweltgeschichte von Handel, Transport und Verkehr
「商業、輸送、交通の環境史」
8.1. Handel, Transport und Verkehr als umwelthistorischer Gegenstand
「環境史の対象としての商業、輸送、交通」
8.2. Das Forschungsfeld Handel, Transport und Verkehr: Disziplinen und Perspektiven
「研究分野としての商業、輸送、交通:専門分野と展望」
8.3. Begriffe
「概念」
8.4. Periodisierung
「時代区分」
8.5. Die umwelthistorische Entwicklung von Handel, Transport und Verkehr
「商業、輸送、交通の環境史的な発展」

9. Bevölkerung in der Umweltgeschichte - Interaktionen zwischen Menschen und anderen Spezies
「環境史のなかの人口:人間と他種との相互作用」
9.1. Bevölkerung in der Umweltgeschichte
「環境史のなかの人口」
9.2. Das Konzept der Co-Evolution
「共進化という構想」
9.3. Wechselwirkungen mit Mikroorganismen
「微生物との相互作用」
9.4. Migrationen: Pflanzen und Tiere in Bewegung
「移動:移動する植物と動物」

10. Gesellschaftliche Wahrnehmung von Umwelt
「環境の社会的認識」
10.1. Begrifflichkeiten und Zugänge
「概念性と入口」
10.2. Design
「デザイン」
10.3. Religiöse-magische Argumentation und Säkularisierung
「宗教的・魔術的議論と世俗化」
10.4. Determinismus
「決定論」
10.5. Wahrnemung menschlicher Umweltwirksamkeit, Problem- und Risikowahrnehmung
「人間の環境効果に関する認識、問題・危険認識」
10.6. Landschaft und Naturästhetik
「景観と自然美学」
10.7. Recht
「法」
10.8. Fazit
「結論」

11. Umweltgeschichte und nachhaltige Entwicklung
「環境史と持続可能な発展」

12. Abbildungsverzeichnis
13. Literaturverzeichnis
14. Register
**********

いままでも数度にわたってドイツの環境史の動向を紹介してきましたが(地域における環境史都市と環境ゲッティンゲンの環境史研究グループ中世の環境史)、本書の特徴は、ドイツ語圏の研究ばかりでなく、これまで環境史を引っ張ってきたアメリカの研究成果やその動向も詳細に取り上げている点にあるかと思います。そういう意味でも、英米の研究に疎いぼくのような人間にとっては、なんともありがたい入門書となっています。

とくに6章、7章がぼくの研究には深く関連する箇所ですので、そこを重点的に読んでいるのですが、それ以外にも、例えば8章の「商業、輸送、交通の環境史」などは、目新しい視点を提供してくれてなかなか刺激的です。そこでは、筏流しや木材流しなどにも触れらており、これまたぼくは楽しく読みました。

本書は、環境史の入門書としては現在もっとも使い勝手の良い作品のひとつだと思います。
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by schembart | 2010-04-16 02:52 | 文献紹介
(一時帰国中の)2月末に日本から送った船便がようやく届きました。待つことおよそ1ヶ月半。

手元に置いておきたい研究書や参考書を中心に、まだかまだかと気長に待った甲斐がありました。半年前には空っぽだった部屋の備え付けの本棚も、いつの間にか満杯に。新たに本棚を買わないといけません。本に囲まれた空間が単純に好きなので、本が増えていくのはなんとも嬉しい限り。

気晴らしに手に取った村上春樹『羊をめぐる冒険』(上・下、講談社文庫)が面白く、つい読み耽ってしまいました。続いて『ダンス・ダンス・ダンス』(上・下、講談社文庫)も読んでしまいましょう。

船便とは別に、Salyuさんの新作CD(初回限定DVD付き)を実家から送ってもらいまして、このとこはずうっとそればかり聞いています。前から好きでしたが、ここまでのめり込むとは、自分でも不思議な感じです。

Salyu, MAIDEN VOYAGE(初回限定盤)(DVD付)



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愚かでも人を想って
間違っても あきらめずに
小さい想いそれぞれでも
繰り返す波のように美しい

あなたを想い 手を取る
どこまでが自分なのかさえ わからなくなる

くりかえす命のコルテオ
幾千の時空を超え繋がってる
行列の先はどこへ続く
行く先は誰にも知らされてないから
時々迷っても また歩き出す

サリュ「コルテオ~行列~」
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by schembart | 2010-04-15 02:12 | 留学生活
Symposium zur Lechfeldschlacht
シンポジウム「レヒフェルトの戦い」

今日は、アウクスブルクの市庁舎で開催される「レヒフェルトの戦い」をテーマとしたシンポジウムに行く予定です。アウクスブルク大学中世史講座のマルティン・カウフホールト教授が組織しており、講演者もなかなか迫力のあるメンバーが顔を揃えております。

レヒフェルトの戦いとは、高校の世界史でも習うかと思いますが、955年、東フランク国王オットー(後に神聖ローマ皇帝)が、アウクスブルク近辺のレヒフェルトにおいて、迫りくるマジャール(ハンガリー)の軍団を撃沈させた、あの戦いです。

ぼく自身の専門分野からは少し離れてしまいますが、せっかくの機会ですので、拝聴してこようか思います。また感想も後から書き足すかもしれませんが、とりあえずプログラムだけ、以下に挙げておきます。

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Programm

Prof. Dr. Walter Pötzl
10. August 955 – die Schlacht als Ereignis: gesicherte Erkenntnisse und populäre Legenden
「955年8月10日―事件としての戦い:確定された認識と一般に流布する伝説」

Prof. Dr. Manfred Weitlauff
Bischof Ulrich und die Schlacht auf dem Lechfeld
「司教ウルリッヒとレヒフェルトの戦い」

Prof. Dr. Martin Kaufhold
Die Lechfeldschlacht und ihre Folgen für die Geschichte der Region
「レヒフェルトの戦いと地域の歴史に対するその効果」

Prof. Dr. Rolf Kießling
Die Lechfeldschlacht in der Erinnerungskultur der Region
「地域の記憶文化のなかのレヒフェルトの戦い」

Dr. Orsolya Heinrich-Tamaska
Die Schlacht auf dem Lechfeld und die Folgen: die ungarische Perspektive
「レヒフェルトの戦いとその効果:ハンガリーからの視点」

Prof. Dr. Hermann Kamp
Waffengewalt und friedliche Alternativen in der Zeit der Ottonen
「オットー期における武力と平和的な選択肢」


Prof. Dr. Bernhard R. Kroener
Den Krieg verantwortlich ausstellen? Probleme und Perspektiven einer Darstellung von Krieg und Gewalt im Museum
「戦争の責任を展示する?博物館における戦争と暴力の描写の問題と視角」

Grußworte
Dr. Kurt Gribl, Oberbürgermeister der Stadt Augsburg
und Markus Ferber, Mitglied des Europäischen Parlaments

Prof. Dr. Rudolf Schieffer
Die Lechfeldschlacht und der Beginn der Deutschen Geschichte
「レヒフェルトの戦いとドイツの歴史の始まり」
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また後ほど感想を書き足すかもしれません

そんなこんなで、行ってきました。たくさんの講演を聞いているだけでも、ずいぶんと疲れてしまいました。しかも予備知識がそれほどなかったので、講演の内容を理解するのもけっこう苦労いたしました。うーむ。でも、こうやってひとつの出来事をめぐって、いろいろな角度から専門家が集中的に議論をするというのはあんまりないので、なかなか刺激的なシンポジウムでありました。

なんといっても会場の市庁舎、黄金の間が噂に違わずなかなか立派な部屋でした。夕日が差し込んでくると、部屋全体がまさに黄金色に輝きはじめます。そんななかで揚々とご報告されていた先生方の姿は様になっており、なんとも絵になる情景でした。
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by schembart | 2010-04-12 15:39 | 講義・講演会・研究会
Safley, Thomas Max: Kinder, Karitas und Kapital. Studien zur Wirtschafts- und Sozialgeschichte des frühmodernen Augsburg. Band 1: Die Waisenhäuser (Studien zur Geschichte des Bayerischen Schwaben Bd. 39-1), aus dem Englischen von Christine Werkstetter, Augsburg 2009.
『子供、慈善、資本―近世アウクスブルクの経済・社会史研究。第1巻:孤児院』

1997年に発表されたサフレイ(呼び方あってます?)教授の『近世アウクスブルクの孤児院における慈善と経済』(Safley, Thomas Max: Charity and Economy in the Orphanages of Early Modern Augsburg (Studies in Central European Histories), Humanities Press, Boston 1997)がドイツ語訳されて新たに刊行されました。

著者は、ペンシルヴァニア大学ヨーロッパ近世史のトーマス・マックス・サフレイ教授。こちら

以前に紹介しました「ニュルンベルク12人兄弟館」は、働くことのできない老人を収容する養老施設でした。近代以前における貧困と慈善の問題を考えるさいに、老人と並んで忘れてはいけないのが、多くの孤児の存在です。本書の課題は、多くの孤児を収容する孤児院を対象に、近世都市における慈善と宗派と経済の密接な関連をアウクスブルクの事例から解き明かすことであるようです。

裏表紙の内容紹介には、次のような説明があります。

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 近世アウクスブルクの孤児院は、ヨーロッパでは最も古いもののひとつだが、その恵まれた史料状況により、この時代の福祉対策を探るための最適な事例を提供してくれる。第1巻(本書)は、慈善と宗派と資本の複雑な絡み合いを取り扱う。孤児院の管理官は、現存する資源を巧みに利用しながら、彼に委ねられた孤児たちへの生活必需品の供給のために最善を尽くし、そのためにあらゆる経済活動の場面に登場した。彼らは、アウクスブルクの資本・労働・商品市場に参与し、そこに投資もしたのである。また同時に、孤児たちに対しては、彼らの将来のチャンスを最大限に膨らませるために、勤勉、節約、忠誠といった市民的な徳を教え込むこともしたのである。
 かくして、孤児院は資本主義経済・社会の揺籃の場ともなったのだ―これは、旧ヨーロッパの貧民救済に対するまったく新しい視点である。
**********

1572年10月にアウクスブルク市参事会が創設した孤児院は、イタリア都市の先例はあるものの、ドイツでは初めての孤児専用施設として知られています(ちなみに、捨て子施設(Findelhäuser)は15世紀から存在していたようです)。1570/71年の危機は、こういった面でも影響を及ぼしていたと考えられますね。ちなみに16世紀アウクスブルクにおける市参事会の救貧政策に関しては、こちらもご参照ください。

さて、そんなアウクスブルクの孤児院ですが、1649年に宗派同権(パリテート)の原則に沿って、カトリックの孤児院とプロテスタントの孤児院の二つに分離します。それぞれ別個に管理・運営がなされていくのですが、そこにはいったいどんな差異が見出されるのでしょうか? あるいは、経営組織として見た場合には、宗派の相違は前景化されないのでしょうか? そんな素朴な疑問にも、本書は答えを与えてくれるかもしれません。

以下が目次。

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Vorwort zur deutschen Übersetzung
Vorwort
Vorbemerkung zum Münzwesen

1. Einführung: Die Waisenhäuser des frühmodernen Augsburg und die Grenzen der Theorie
「はじめに:近世アウクスブルクの孤児院と理論の枠組み」
1.1. Der einzigartige Fall Augsburg
「比類なき事例アウクスブルク」
1.2. Die Perspektive der Geschichte und die Grenzen der Theorie
「歴史の見方と理論の枠組み」
1.3. Karitas und Kapital in den Waisenhäusern
「孤児院における慈善と資本」
1.4. Fazit
「結論」

2. Eine kurze Geschichte der Armut und der Karitas im spätmittelalterlichen und frühmodernen Augsburg
「中世後期および近世アウクスブルクにおける貧困と慈善の略史」
2.1. Die Stadt Augsburg
「都市アウクスブルク」
2.2. Der Aufstieg des Kapitals und seine Konsequenzen
「資本の隆盛とその帰結」
2.3. Augsburgs beflecktes Goldenes Zeitalter
「アウクスブルク黄金期の汚れ」
2.4. Reformation und Karitas in Augsburg
「アウクスブルクにおける宗教改革と慈善」
2.5. Die Konfessionalisierung der Karitas
「慈善の宗派化」
2.6. Alte Ordnung und neue Realitäten
「古い秩序と新たな現実」
2.7. Fazit
「結論」

3. Kapitalistische Praktiken und vor-kapitalistische Organisationen: Land, Kalkulation und Verwaltung in den Waisenhäusern
「資本主義的策略と前資本主義的構造:孤児院における農村、計算、管理」
3.1. Kapitalistische Praktiken
「資本主義的策略」
3.2. Die Rolle des Landes in der Augsburger Wirtschaft
「アウクスブルク経済における農村の役割」
3.3. Die Nutzung von Land in einer städtischen Ökonomie
「都市経済における農村の利用」
3.4. Die Nutzung von Land und die Waisenhäuser
「農村の利用と孤児院」
3.5. Konfession und Land
「宗派と農村」
3.6. Fazit
「結論」

4. Subventionen, Spenden und Erträge: Zahlen für die Armenfürsorge
「助成、寄付、収益:貧民救済のための支払い」
4.1. Die drei Säulen der öffentlichen Karitas
「公的慈善の三つの柱」
4.2. Die Parität und die sich verändernde finanzwirtschaftliche Basis der Augsburger Waisenhäuser
「宗派同権と変わりゆくアウクスブルク孤児院の財政基盤」
4.3. Die Finanzverwaltung in den Waisenhäusern
「孤児院における財政管理」
4.4. Fazit
「結論」

5. Karitas und Kapital in den Waisenhäusern
「孤児院における慈善と資本」
5.1. Die Augsburger Waisenhäuser auf dem Kapitalmarkt
「資本市場におけるアウクスブルクの孤児院」
5.2. Kapitalquellen und ihr Wert
「資本の源とその価値」
5.3. Die Diszipilin des Kapitals: Chancen und Grenzen
「資本の規律:機会と限界」
5.4. Fazit
「結論」

6. Die Versorgung Augsburgs: Kauf und Verkauf von Bedarfsgütern in einer frühmodernen Stadt
「アウクスブルクの供給:近世都市における必需品売買」
6.1. Konfession und Bedarfsgüter
「宗派と必需品」
6.2. Marktangebot und Marktregulierung
「市場の提供品と市場調整」
6.3. Verbrauch und Karitas
「消費と慈善」
6.4. Fazit
「結論」

7. Karitas und Verbrauch in den Waisenhäusern
「孤児院における慈善と消費」
7.1. Der Größeneffekt
「大成功」
7.2. Die steigenden Kosten der Waisenbetreuung
「上昇する孤児養育費」
7.3. Der Erwerb von Waren und Dienstleistungen
「商品とサービスの取得」
7.4. Verbrauch, Standardisierung und Disziplin
「消費、基準化、規律」
7.5. Verschwendung als Devianz
「逸脱としての浪費」
7.6. Fazit
「結論」

8. Arbeit und Gewerbe
「労働と生業」
8.1. Die Organisation der Handwerke
「手工業の構造」
8.2. Die Suche nach Arbeit für Waisen
「孤児のための仕事探し」
8.3. Rechte und Pflichten der Ausbildung
「教育の権利と義務」
8.4. Der Arbeitsmarkt und die Waisen als Lehrlinge
「労働市場と徒弟としての孤児」
8.5. Das Schicksal der Waisen Augsburgs
「アウクスブルクの孤児たちの運命」
8.6. Fazit
「結論」

9. Fürsorge und Arbeit in den Waisenhäusern
「孤児院における世話と労働」
9.1. Die Waisenhäuser als Schulen der Arbeit
「仕事の学校としての孤児院」
9.2. Die Waisenhäuser als Zwischenstationen zur Arbeit
「仕事への中継地としての孤児院」
9.3. Fazit
「結論」

10. Fazit: Zu einer neuen Organisationgeschichte
「結論:施設の新たな歴史へ」
10.1. Karitas und Kapital
「慈善と資本」
10.2. Parität und Kapital
「宗派同権と資本」
10.3. Überlegungen zu Max Weber: Karitas, Parität und Kapital
「マックス・ヴェーバー再考:慈善、宗派同権、資本」
10.4. Fazit
「結論」

Anhang 1: Graphiken
Anhang 2: Quellen

Quellen- und Literaturverzeichnis
Abkürzungsverzeichnis
Verzeichnis der Abbildungen, Graphiken und Tabellen
Personen- und Ortsregister
***************

マックス・ヴェーバーまで登場する柄の大きな議論ですが、のんびりと読み進めていきたいなと思います。ぼくとしては、やはり宗派化と慈善の関わりが気になるところ。ちなみに、付録には「孤児院の週間献立表(Wöchentlicher Speiseplan des Städtischen Waisenhauses)」という史料が掲載されていまして、これがまたなかなか興味深いものとなっています。
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by schembart | 2010-04-10 02:57 | 文献紹介
Endres Tuchers Baumeisterbuch der Stadt Nürnberg (1464-1475), hrsg. v. Matthias Lexer (=Bibliothek des Litterarischen Vereins in Stuttgart 64), Stuttgart 1862.
『都市ニュルンベルクの建築役エンドレス・トゥーハーの書(1464-1475年)』

今から150年近く前にマティアス・レクサー(辞書の編纂で有名ですね)によって編まれた『建築役エンドレス・トゥーハーの書』ですが、2009年にミシガン大学の図書館が(表紙を付け変えただけの)リプリント版を出しました。こちら。グーグルなどでその全文は見られるのですが、どうもやはり本の形で欲しかったので買ってしまいました。

エンドレス・トゥーハー(Endres Tucher; 1423-1507)は、1461年からニュルンベルクの都市建築役(Baumeister)を務めており、その仕事の内容をまとめたのが本書です。トゥーハー家はニュルンベルクの伝統ある都市門閥家系ですが、現在ではあのトゥーハー・ビール(Tucher Bräu)で有名です。

中世後期のドイツ都市において、建築役は公共建築の建造とその維持にとどまらず、街路の清掃や火事対策、あるいは都市壁などの防御施設の管理なども担っていました。都市の安寧と平安を取り仕切る、まさに都市の「公共の福利」に関わる重要な役職だったのです。そのためいくつかの都市(ニュルンベルクやアウクスブルク)では、建築役は市長に次ぐ重要な地位にありました。ちなみに、当時のドイツ都市における建築に関しては、邦語でも以下の文献がとても参考になります。

- 相澤隆「ドイツ中世都市における町並みの形成と建築条令」樺山紘一編『西洋中世像の革新』刀水書房、1995年、235-254頁

- 小沼明生「中世後期レーゲンスブルクにおける建築業と都市当局―建築業規約の分析から―」『メトロポリタン史学』3 (2007), 103-139頁

また都市の「公益」に関わるということで、近年のポリツァイ研究(例えば、イゼリ『良きポリツァイ』など)においても「建築ポリツァイ」や「公的空間の維持」などのキーワードでもって関心を集めています。

さて、本書『建築役エンドレス・トゥーハーの書』は、当時の建築役自身が記したその任務の概略や、またニュルンベルクのさまざまな建造物や各種施設(例えば水道施設や泉など)に関する豊富な情報を含んでおり(本文で229葉!)、中世後期の都市生活を知る上でも最適な史料です。エリアス・ホルの時代(16世紀後半から17世紀初頭)になれば史料の量も増えてくるのですが、15世紀の時点ではまだまだ史料の数も限られています。そういう点でも、本書は第一級の史料価値を有していると言えるかと思います。

建築役の仕事は非常に多岐にわたっていました。例えば、「森林伐採人について(Von dem Waldhawer)」という章には、森林伐採人の義務やその仕事の内容、また伐採される樹木の種類、その長さと価格など、ぼくの研究にも有用な情報がたくさん含まれています(本書、69-78頁)。また火災についての詳細な対策を記した「火災についての書(Fewerpüchel)」も付されていまして、災害史的な視点からも興味深い情報をたくさん提供してくれます(本書、327-333頁)。

本文も長いですし、古いドイツ語ですのですらすらと読み進めることはできませんが、じっくりと読み込んでいこうと思います。それにしても、トゥーハー・ビールが飲みたいな。
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by schembart | 2010-04-05 22:19 | 文献紹介